2022.11月号

 「腕の折り方」

 

 こちらのコラムでも度々話題としてきました、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。当初は2日で終わるとの予想もありましたが、2月24日の侵攻開始から半年以上が経過しても終わる気配はありません。この間、ロシアに対する世界的な非難は強まってきており、様々な輸出規制から先月、トヨタが2007年から操業し人気車「カムリ」を生産2021年にはトヨタの世界生産1%にあたる約8万台を生産していましたロシア工場を閉鎖し建物、土地を売却する手続きに移りました。

 マクドナルドが撤退してもニセモノバーガーを作ることはできますが、高度な工業製品である自動車は簡単には作れません。日本車はロシアでも人気が高く、富裕層はランクルが成功の証であり、今後心配されるのが、こういった人気車種が日本国内で盗難され、密輸されるケースが増える可能性があるということ。

 日本損害保険協会の調査によると、盗難被害にあった車両は2021年で9,189台あり、1位はランドクルーザー(331)2位はプリウス(266)3位はレクサスLX(156)となっており、盗難車が全て国外に行くわけではありませんが、その需要は増え続けているといいます。

 ソ連崩壊後、広大な土地と資源を活用し好調な経済発展を維持しBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)として今後発展する途上国と世界中から投資を集め、ロシア国民の生活も年々向上してきましたが、今回の軍事作戦でソ連時代に戻るのか、それ以下になる可能すらあります。

 理不尽な侵略を受けたウクライナの国民には同情しますが、一方で以前まではiPhoneを使い、マックを食べ、日本車に乗る、当たり前の日常が「徴兵のため出頭せよ」とロシア国民にも同情してしまいます。

 ロシアの国防大臣は「動員できる国民は2,500万人いる」と発言しており、多くの国民に不安が広がっているようですが、インターネット上には徴兵されない為「腕の折り方を教えるサイト」が流行っており、国外を目指す市民も多いことから、航空運賃は上がり、ドバイに向かうチケットは130万円まで高騰したといいます。今後も更なる戦闘の激化が予想され、双方のおびただしい血が流れるのは間違いありません。

 自分の子供達が「腕の折り方」を真剣に調べる世の中、そこまでして得られる国民の幸せは本当にあるのでしょうか。

                                             魚谷 直世 記

 

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