2021.5月号

 

 「コロナ禍後」

 

 商品、サービスの値札、チラシに消費税込みの価格を示す「総額表示」が4月から義務化となりました。2004年から総額表示は行われていましたが、今までは特措法として、税別価格であることがわかる表記になっていれば、税込価格の表示は必須ではないとされていましたが、今年からは店頭で販売する全ての商品、サービスは消費税込の価格となります。

 1989年から始まったこの消費税の大義名分は年々増加する社会保障費を賄うためだったはずですが、今月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳まで働き続けることが国主導で推進されており、定年延長の希望者に70歳まで雇用の機会を与えることで「人生100歳時代」の老後資金をもっと準備できるようにするというのが表向きの理由となりますが…実のところ「これから年金支給年齢は上がり、支給額は下がる一方なので、働けるあいだは自分で稼いでください」と言われているような気がしてなりません。

 厚生年金保険の平均年金月額は、令和元年度で146千円、国民年金では56千円となっており、年金だけで現役時代の生活を維持していくのは難しくなってきました。コロナ禍による将来不安が追い討ちをかける中、現役世代は消費から預貯金へと昨年末の個人預金は過去最高の1056兆円にまで膨れ上がっています。景気が後退する中で、お金が消費に回らないため賃金も上がらず、逆に物価は上昇しているため、資産価値が減っていく。日本は今、1970年代のオイルショック以来のスタフグレーションに入ってきています。

 この状況を防ぐのには、個人消費を拡大させ、それに伴い物価を上昇させる必要があり、本来ならば消費税を時限的にでも凍結・減税するのが一番効果的なのですが、財務省はコロナ対策で使った税金を回収するため、収束後に「コロナ復興税」として消費税を15%に引き上げるという説もあり、収束後も日本経済は様々な困難が待ち受けている予感がします。

 コロナ禍も大変、コロナ禍後も大変そうですが「悲観的に準備して、楽観的に行動する」と孫子の兵法にも書いてあります。今の我々は悲観的が多すぎて、楽観的な部分が少ないように感じます。どのような状況でも同じ行動ならば「楽しむ」のか「イヤイヤ」やるのか、同じ大変ならば楽しまなければ損です。

                                             魚谷 直世 記

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