2021.10月号

 

 「マトリックスの世界」

 

 1年遅れとなったオリンピック・パラリンピックが閉会しました。柔道73kg級でオリンピック連覇を果たした大野将平選手は試合終了後のインタビューで「賛否両論があることは理解しています。ですが、われわれアスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば本当に光栄に思います」色々と議論のあったオリンピックですがアスリートの素直な気持ちが出ており、一生懸命なアスリートの姿には何度も感動を頂きました。

 また、競技とは別に興味を惹かれたのが、選手村を走る自動運転の電動バス「eパレット」の存在が近い未来の移動手段になるのではと注目しておりました。選手や大会関係者の移動に活躍し、将来的には移動コンビニや移動ロッカー等々「必要な時に、必要な場所へ、必要な台数だけ」をコンセプトに車を保有するという概念すら変えてしまう存在でしたが、パラリンピック開催中に選手村で視覚障害のある日本男子の柔道選手と接触し、全治2週間のケガにより試合出場を断念するという事故がありました。

 トヨタ自動車の豊田社長は翌日に「普通の道を普通に走るのはまだ現実を帯びていない」とサイトで謝罪しましたが、その後の報道では「eパレット」はオペレーターが手動発進させた直後に死角にいた選手と接触したとのことで、人為的なミスが事故の原因とのことです。

 しかし、人為的なミスをリカバーするぐらいではないと本当の自動運転とは言えないのも事実で、2005年に起きたJR福知山線脱線事故も後れを取り戻そうとした運転手のスピードオーバーが原因と言われていますが、カーブで速度を制御する自動停止装置がついていれば、この事故は防げたとも言われています。

 徹底的な教育、訓練を施したとしても、人間が操作する以上、人為的な事故を100%防ぐことは不可能で機械が誤作動したときに人間が修正するのではなく、人間が判断ミスを起こした際に機械が制御する方が重大な事故は防げるのではないでしょうか。

 我々も西浜店にドライブスルー型の洗車機が設置されましたが、高度なセンサーが張り巡らされており人間が介入する余地はなく、機械が上か、人間が上か。どこまで機械に任せて、どこまで人が介入するのか、現代の社会システムにとって大きな課題を感じました。すべてを機械に管理される社会は近いのかもしれません。

                                             魚谷 直世 記

今回の店主雑感のご意見、ご感想等お願いいたします。

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