2021.4月号

 2通の手紙」

 

 このコロナ禍の不自由な生活も約1年が経過し、この生活様式も慣れつつありますが、今までは当たり前だった出張や旅行、外食はまだまだ制限されており、それに関わるすべての会社に影響が出ています。

 しかし、各種支援策に支えられ東京商工リサーチの調査では2020年の倒産件数は7,773件と過去50年間で4番目の低水準となっており、ひとまず各会社は影響の長期化に向けて体制変更の時間を稼いでいますが、一方で倒産理由を「後継者難」としての倒産は2020年で370件と前年比137%で急増しています。

 全国の社長さん達の平均年齢は62.16歳と調査依頼の最高齢を記録しており、着々と高齢化が進んでいるため、不測の事態に備え事業継承を急ぐ傾向にありますが、後継者不在率は57.5%と半分以上の会社には、親族や社員を含めて事業を継承してくれる人がいないということで、このコロナ禍の中、ビジネスモデルや労務管理の変革を迫られ、更に後継者の不在が事業継続断念の引き金になっていると予想されています。

 たかだか社長が変わるだけと簡単に見えますが、株式の譲渡や売買には親族間でも多大なお金と労力がかかり、金融機関や取引先、社員間等々もあり、譲る側も大変ならば、譲られる側にとっても難しい問題となります。

 旧ソ連のジョークで、フルシチョフ大統領が権力の座を降りる時に、後継者に2通の手紙を渡してこう言いました「困った事態になったら最初の1通を開きなさい、そしてまた困った事がおきたら2通目の手紙を開きなさい」後継者はやがて困った事態に遭遇し、1通目を開いてみました。そこには「私のせいにしなさい」と書いており、後継者はその通りにして危機を切り抜けましたが、やがて2回目の危機を迎えて、2通目の手紙を開くと「あなたも2通の手紙を書きなさい」責任を他人に転嫁することで困難は先延ばしできますが、結果としてソ連は崩壊、問題は先延ばしすれば、するほど事態は悪化するという戒めなのかもしれません。

 コロナ禍が始まり1年、もう国がなんとかしてくれる、もうすぐ良くなるというのは難しい状況になってきました。人口も少なくなる中、今までにはない形で会社を変化させていかなくてはなりません。

                                             魚谷 直世 記

 

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