2020.8月号

 

 「リックの悩み」

 

 コロナ禍による自粛も終わり、まだ予断は許さないものの店頭での動きから出張や会議も徐々に増えてきました。しかし、今思うと自粛期間中は仕事が終わると真っすぐに家に帰り、それぞれ自分や家族の時間を大切にできた時間だったなと感じていますが、私の場合は今更ながら「ウオーキングデッド」というアメリカドラマにすっかりはまってしまい、夜中に娘と見入っていました。

 ご存知の方も多いと思いますがこのドラマは2010年からアメリカで放送された大人気シリーズで、現在もシーズン10としてまだ放送が続いています。和訳すると「歩く死体」というタイトル通り、アメリカ的なゾンビに噛まれた人が次々とゾンビになってしまうという、お馴染みの設定ですが、不謹慎ながらコロナ禍の中、世界中がウイルスに汚染されていく世界観が妙に現実的で、アメリカのコロナ禍で一番売れたものが「マスク」ではなく「銃弾」というのが、このドラマで理解できるような気がします。

 ゾンビ映画は苦手という方も多いと思いますが、私も得意な方ではなく、特に流血は自分の血を見るのも嫌で、いつも献血の際には首を限界まで曲げて絶対に見ないようにする程ですが、このドラマはグロテスクな部分も多くありますが、それ以上に生き残った人の習性や心理に重点をおいて描かれており、つい感情移入してしまいます。

 混沌とする世の中で人々は自然と集団を作り、その中で主人公の「リック」はリーダーとして、父親として、多くの決断をしていきますが、普段我々が使っている平等や正義に正解はないのだと考えさせられます。

 社会学的には分配という定義は大きく4つで①「平等原理」全員に均等に分配。②「衡平原理」集団での貢献度に応じて分配。③「必要原理」個々の人々が必要としている度合いに応じての分配。④「独占原理」最も高い貢献をしたもののみに分配するとなっており、難しいのがどの分配も正解であり不正解いうことです。つまりは「リック」の決断に対して賛成や反対する人、不満ばかりを口にする人もおり「リック」の悩みはつきませんが、その葛藤する姿が人間らしくもあります。

 ゾンビがいなくても人の悩みは尽きないもの、しかし「悩み」は人のことを思うから悩むのであり、悩みがあるということは、思う人がいると言うこと、悩みがあるというのは実は幸せなことかもしれませんね。

                                             魚谷 直世 記

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