2023.5月号

 「さあ、行こう!」

 

 このコラムが出るころには少し前の話題になりますが、今回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)見た方は多いと思います。日本戦は視聴率が全て40%を超え、国民の8割が何らかの形で見たと言われるほど、日本中を熱狂させました。

 数々の名場面が生まれ、漫画でも描けないほどの劇的な展開が多くありましたが、特に準決勝メキシコ戦では9回先頭の大谷選手は二塁打を放ち、ベースに到達した直後、仲間たちを鼓舞するように拳を突き上げ「カモン!」と叫びました。「オレに続け」と言わんばかりのあの姿を見て奮い立たない選手はいないと思いますし、その期待に応え最後はこのWBC期間中打てなかった村上宗隆選手がサヨナラタイムリーを打ち見事に逆転勝利となりました。メキシコ代表ベンジー・ギル監督は試合後の記者会見で「日本が勝ちましたが、今夜の試合は野球界にとっては勝利を収めた」アメリカでも日本でも野球人気は低迷気味ですが、野球の試合を見て、ここまで面白いと思った試合は今までなかったかと思います。

 このWBCを見てプロ野球を見始める人、野球を始める子供達が一人でも増えるのならば、野球界にとってはこれ以上の勝利はないのかもしれません。アメリカ代表との決勝の試合前の声掛けで、大谷選手が「僕から一個だけ。憧れるのをやめましょう。ファーストにゴールドシュミットがいたり、センターを見ればマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたり、野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う。憧れてしまっては超えられないので、僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。さあ、行こう!」大谷選手の言葉は野球に限った話ではなく、謙遜するというのは日本人の美徳でもありますが、一歩間違えれば萎縮、卑下にも繋がってしまいます。

 精一杯の努力することで、自分に自信を持ち、最後まで諦めないこと。今年のWBCは野球の楽しさだけでなく、野球を通した生き方のメッセージを伝えてくれたような気がします。新学期となり新しい門出を迎えた人も多くいると思いますが、一歩でも前に進むことができれば、1年後は自分でも驚くほどの場所に。まずは小さくても1歩「さあ、行こう!」

                                             魚谷 直世 記

 

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