2015.12月号

「素直


 寒さも厳しさを増し、師走を見すえた慌ただしい時期が今年もやって来ました。振り返るのはまだ早いのですが、今年は多くの出会いに恵まれた年でした。多くの人と出会うことで感じるのは、人との出会いというのは自分の内面を見つめなおす鏡ではないかと思います。

 日々日常を過ごす中、自分の外見を鏡で確認し最近お腹かが出てきたなぁと、あくまでも表面的な自分を見ることができますが、自分の内面を見つめなおす機会というのは中々ありません。多くの人と出会うこと、話すことにより、それは決して楽しい体験ばかりではないと思います。時には不快な出来事も、腹が立つ人に出会うこともあるでしょうが、そのような体験も人生において損なことではなく、それを経験することで自分の行動を見つめなおすことも出来るのではないかと思います。年代の違う人と話すのも重要であり、人生の先輩からは自分の未熟さを知り、後輩からは自分の不勉強さを知ることが出来ます。一日鏡を見ない人はいないと思いますが、この世の中に鏡というものがなければ、髪はボサボサ、髭はボウボウ、女性は化粧すら出来なく外見を整えることは出来ません。自分の内面も同じであり、人との出会いなくして、自分を律することは難しいのではないでしょうか。

 私の友人で、どのような人生を送っている人でもいいので一日一人は初めてあった人と話すのを日課にしている人がいますが、やはり驚くほどの柔軟な発想を持っており、普段話す会話の幅も会うたびに広がっているような気がします。人口数百万人の都会と違い、28千人の根室市、我々の出会いというのは一人一人が都会の人よりも数百倍貴重なのです。どのような物事も、見る時に一方側から見ては、その物事の全体像を見ることは出来ません。横から見る、後ろから見る、色々な角度から見ることによりすべての全体像を見ることが出来るのではないかと思います。違う意見の人を排除するのは簡単なことですが、それでは物事を全体で見ることは出来ません。視野が広い、輝いて見える人というのは、人の話を聞ける「素直」な人なのかも知れません。

                            魚谷 直世 記