2015.10月号

「風情」


根室の各種イベントも終盤を迎え、季節はいよいよ本格的な秋となりました。一昔と違い、ゲリラ豪雨等の異常気象や参加人数の減少、運営金の減少、道路占有許可の問題等々、運営側の頭を悩ます問題は年々増えていますが、全国のイベントでは新たな問題として騒音苦情の対応が増えていると言います。

各地伝統あるお祭りを開催するにあたり中々近隣の理解が得られず、トラブルに発展するケースもあり、対応に苦慮している運営者は多いと聞きます。根室のイベントもそのような苦情によって縮小や変更されたケースもあるといいますが、愛知県東海市で行われています盆踊りでは、画期的な方法でその騒音問題を解決しました。参加者全員がイヤホン付携帯ラジオを持ち、FMラジオに流れる音楽で踊るという、その名も「無音盆踊り」非常にシュールな印象を受ける盆踊りですが6年程前から開催しており、当初4050人だった参加者も本年400人を超える人数が参加したとのことです。斬新すぎるアイデアで当初は「不気味」「東海名物ゾンビ踊り」等々散々言われていたものの、参加者からは「踊りに集中できる」等で好評を得ており、年々参加者が増えているとのことですが、このアイデアを他のイベントに使うのには相当な勇気が必要となります。伝統ある盆踊りですら「うるさい」と言われる世の中で「風情」という言葉が死語になりつつあるこの現状に寂しい気もしますが、それだけ現代人は心の余裕がなくなってきているのかもしれません。

人は気分により支配されており、怒りの感情はその時や人によって違いますが、怒りやすい人は、温和な人と比べ寿命が短いということが科学的に証明されております。スマホも携帯もない時代には、時の流れや季節を感じ、自然の力を感じる「風情」がありました。お祭りやイベントの音、子供の声すら聴き方によっては耳障りな騒音にもなり、聞き方を変えると風情ととらえることも出来ます。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」確かに世の中には理不尽なことや腹の立つことで溢れていますが、それを怒りにだけ変えるのは損なことです。

                           魚谷 直世 記