2016.11月号

 

「北方領土

 

 12月にロシアのプーチン大統領の訪日が決まり、北方領土返還に期待するニュースも増えて来ました。根室に住む我々にとっては「今回の会談で返還が決定されるかもしれない」という話は毎年のように聞く話で、政治家が話す耳触りのいい夢物語でしかありませんでしたが、今回の会談はいつもとは状況が違い、返還の可能性がいよいよ現実味を帯びて来ました。

 元々は1956年の日ソ共同宣言において、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島の2島先行返還は約束されており、それはロシアに変わった今も有効とプーチン大統領自身も認めています。しかし、現在にいたるまで友好条約が結ばれることなく返還は実現しておりません。理由は様々ありますが、大きな問題は2つあり、一つ目は当時の東西冷戦期にソ連と日本との距離を縮めてほしくないアメリカの意向で、当時まだ返還されていなかった沖縄を盾に強く日本にメッセージを送ったと言われています。又、国内も政治的な混乱期から世論を統一することが出来ずに、現在まで北方領土返還は禁句として影響を残しました。しかし、今回の会談は、障壁となるアメリカが1月に大統領選を控えており、政治的な空白期間にあるため、日本への影響力が最も少ない時期になります。又、与党は1月の衆議院議員解散選挙の可能性を示唆しており、数年前の小泉政権時の郵政解散選挙に続く、北方領土解散選挙として、国民の真意を問うものになるのかもしれません。

 選挙となった場合、現在の野党の状況を見れば、圧倒的に与党有利となり、北方領土の返還交渉は民意を得たという結果なります。元島民の多い根室市民にとって2島先行返還となった場合の受け方は様々だと思いますが、この2島が先に返還された場合、陸地面積は北方領土の7%にすぎませんが、経済水域では北方領土の20%から海上ラインの交渉によっては最大50%にもなる広大な海域が戻ってくる可能性があり、根室の漁業が大きく発展する可能性があります。

 戦後71年が過ぎ、元島民の平均年齢も81歳を超え、元気に島の暮らしを伝える方も少なくなってきました。自分の故郷を見たい、先祖の墓を参りたいというのは日本人として誰もが思うことです。一人でも多く存命のうちに、今回の会談を解決の第一歩としてほしいと願っています。

                                           魚谷 直世 記

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