2015.3月号
「未来 」
昨年、トヨタ自動車は世界初となる一般向け水素燃料電池車「MIRAI」を発売し、ハイブリット車「プリウス」の次を担う車として期待されています。又、それと同時にトヨタ単独で保有している燃料電池関連の特許5,680件を無償で提供すると発表しました。通常の製品ならば、特許によって他社が追随出来ないようにし、利益を上げる方法もありますが、ゼロからのスタートとなる水素燃料電池車の場合は供給拠点等のインフラ整備がトヨタ1社では進められないとの判断からか、特許の無償公開に踏み切ったと思われます。石炭を販売する売炭所がガソリンスタンドに変化してきたように、我々も将来的には水素を販売する水素ステーションになるのかはまだわかりませんが、現在の建設コストでは、その場で水素を生産する「オンサイト型」で約5億円、水素を生産する他の工場から水素ローリーでステーションに充填する「オフサイト型」で約1.5億円と言われており、我々のような中小企業にとってはまだまだ敷居が高く、一部の大手企業が大都市を中心に数カ所を稼働させているのみとなっています。しかし、あるビジネス情報誌によれば世の中の車は2030~2040年頃までには水素燃料電池車が主流になると推測しており、1997年に発売開始されたハイブリットカー「プリウス」の普及スピードを見ればある程度の真実味がある予想かもしれません。どちらにせよ小排気量ターボ、クリーンディーゼル、ハイブリット、プラグインハイブリット、電気自動車と後発の水素燃料電池車のライバルは多く、電池技術の発展状況により未来の主力エネルギーはまだわかりませんが、今の主力エネルギーである石油は石炭と同じ非効率な旧世代のエネルギーとなります。
石油資源の争奪を発端とする第二次世界大戦から本年で70年が経過しますが、その間も石油資源を問題とする戦争は絶えることがありませんでした。産油国たる中東諸国に利権を狙う他国の干渉によって引き起こされる悲劇の歴史「石油一滴は血の一滴」の時代はエネルギーの世代交代により終わるのかも知れません。水素燃料電池車はまさに世界の「MIRAI」を創る可能性があるのです。
魚谷 直世 記