2013.10月号

「無駄を省く」

 

 我々のブランドマーク「ENEOS」のCMでもおなじみのイチロー選手が先月、日米通算4,000本安打を放つ快挙を達成しました。メジャー通算3,000本安打も見えてきており、普段あまり野球は見ない私ですが、40歳になる先輩が足を止めることなく次々と記録を破っていく様はただ感動するだけではなく、人生において何が必要で何が重要なのかを教えてくれている気がします。

 このイチローの打撃技術の秘訣が日経新聞の記事になっており、スポーツ心理学者曰く「イチローにはそぎ落としの美学がある」人は成長しようとする時に、普通の人は何かを付け加えようとしますが、イチローの思考はまったく逆であり無駄なことを省こうとするとのこと。例えるならイチローのバットは非常にスリムな形状をしています。常識的に考えるとバットにボールを当てるのならば、団扇のように太いバットが効率的と考えますが、イチローは「適正な効率により最高の効果をえるため」あえて細いバットでミートポイントを絞り使用しているとのことです。商売にこれをあてはめるならば、我々のような小企業が体力で勝る、まさにメジャーリーガー級の会社と競い合い生きていくにはまさに「成長するために無駄を省く」という作業が必要なのかもしれません。事業を行うにあたり設備投資を行い、販売促進をして採算割れの安値販売により驚異的な売上を記録しても得られるものは一時的な称賛でしかありませんし、これにより企業体力を落とすようなことになれば、資本をかけたドーピングでしかありません。それよりも会社の本業は何かと真剣に考え、その本業に磨きをかけるべきということだと思います。

 5,000本安打の可能性についてイチローは「ゼロではない」と答えています。先発出場が保障されていないヤンキースにあえて移籍しましたが「毎日同じことを繰り返すことで安定した状態に持っていく技術はある」とのこと。無駄を落とした肉体と精神力で何歳まで、いったい何本の夢を見せてくれるのか、これからも活躍が楽しみです。私の場合も無駄についた贅肉と自分に甘い精神力を何とかそぎ落とさねばといつも思ってはいるんですよ、思っては・・・

                                             魚谷 直世 記